高校三年生の時でした。私は同性愛者でカミングアウトもして、両親とも関係が壊れて、でも進路を決めなければいけないという微妙な時期だったんです。

当時付き合って彼が住職だったことから、よくそのお寺に遊びに行き、傷付いた心を癒してもらっていました。そんな不純な動機から両親に、住職になりたい、といった時は絶句されました。当時の私なりに意志は固かったのですが、それでも決める前に一度ある場所を尋ねるように勧められました。それは母に知人の住職の紹介で青森県の弘前にあるお寺街道でした。そこは密集している地域で、道に迷わないように分厚いお寺関係の雑誌を借りました。そこのお寺を一軒一軒訪れ、手を合わせることを勧められたんです。言われるがままに実行してみました。電車で二時間もかけて現地に到着、手を合わせ始めたんです。すると出会いは突然訪れました。いきなり私の前に車が止まり、知らないおじさんが声を掛けてきたんです。
「その雑誌どうしたの?」
話を聞くと、なんとその雑誌の編集者で、私がお借りした雑誌は大変有名なものだったようなのです。世間話と事のいきさつを話し、頑張れと言われました。
何十件もあるお寺を丁寧に巡ったのですが、不思議と人には会いませんでした。そして最後のお寺にも手を合わせて、帰ろうとした時です。
「あら?どうしたの?」
女性の方に声を掛けられました。その方は住職の奥さんで私の話を聞いてくれました。そして奥さんからも話を聞いて住職になることの難しさ、なりたいだけじゃ駄目なんだという現実を知り、やや愕然としました。しかし奥さんは言ってくれました。
「今ここに来ようと思った気持ち、それはあなたが住職になる事よりも凄く大切な事だよ」
すーっと心が軽くなったような気がしました。あのお寺巡りで学んだこと感じたことを上手く言葉には出来ませんが20年近くたって今でも鮮明に脳裏に焼き付いています。

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